【Story研修・特別版】
「マーケティング・その他」「モチベーション・アップ研修」の話題から
マーケティングの世界でよく知られた「靴」に関するお話
今回は、山本が大好きな靴の市場調査に関するお話です。これは、
フィリップ・コトラーというマーケティングの大家の本にあったもので、モチベーション・アップ研修でよく使わせて いただいています。教訓に満ちたお話なのですが、身近な靴が素材であり受講生からの反応は上々です。
香港に靴メーカーを経営する人物がいた。ある日彼は、南太平洋の孤島に靴の市場が存在するかどうかを知りたくなり、ご用聞き(オーダー・テイカー)の男を派遣した。ご用聞きは、ざっと様子を調べて電報を打った。「島の人間は靴をはきません。ここには市場はありません」。
納得のいかない経営者は、次に販売員(セールスパーソン)を派遣した。販売員からの電報には、こうあった。「島の⼈間は靴を履いていません。ものすごい市場があります」。裸⾜の⼈間をおおぜい⾒かけて、すっかりのぼせてしまったのかもしれない。
そう思った経営者は、第三の使者としてマーケッターを派遣した。マーケティングの専門家である彼は、部族⻑ならびに数名の現地⼈にインタビューしたうえで、こう打電してきた。
「島の⼈間は靴を履きません。そのため、彼らの⾜は傷つき、痣(あざ)もできています。私は部族⻑に、 靴を履けば島⺠も⾜の悩みから開放されると説明しました。部族⻑は非常に乗り気です。彼の⾒積もり では、1足10ドルなら島⺠の70%が購⼊するとのこと。おそらく初年度だけで5,000 足は売れるでしょう。
島までの輸送と流通経路の確⽴に要するコストは1⾜当り6ドル程度と思われます。初年度の純益は 2万ドルですので、投資額から判断して投資収益率(ROI)は20%となり、わが社のROIを 5%上回ります。もはやいうまでもないことですが、この市場に参⼊すれば将来⼤きな利益が⾒込まれま す。ぜひ話を進めましょう」。
未知の分野に挑戦しようとするとき、20%以上の⼈が賛成したら⾒送るという話を、ある経営書で読 んだことがあります。20%も賛成するなら、他でもすでに検討している可能性が高く、パイオニアとしての メリットを享受できないからとの判断のようです。でも、この「靴」のお話なら、自信を持ってチャレンジできそうですね。
『コトラーのマーケティングコンセプト』(フィリップ・コトラー著/東洋経済新報社)