【Story研修・特別版】
「マーケティング・その他」の話題から(2016 年 9月 25 日投稿)
借⾦のかたに取られそうになった娘を救った「水平思考」とは 発想法(2)
(前号の続きから)⾦貸しの罠で絶体絶命のピンチに直⾯した商⼈の娘さん。彼⼥がこのピンチから脱出する⽅法を⾒い出そうとしたら、それは、慎重に論理的に分析して解決策を⾒いだそうとする垂直的思考でしょうか、それとも、あらゆる可能性を考慮の対象に⼊れ、常識を覆すような発想を⽣み出すことのある⽔平的思考でしょうか…。
垂直的な思考家は、この場合まずあまり助けにはならないが、その考え方によると、次の三つの可能性が考えられる。1. 娘が石を選ぶのを拒否する。2.さいふの中を開け、⼆つの⿊い⽯を⽰して、⾦貸しの欺瞞をあばく。3.⿊い⽯を選んで、⽗親を監獄送りから救うために⾃分を犠牲にする。
ただ、いずれにしても、これらの方法は娘にとってはあまり役に⽴たない。というのは、⽯を選ぶのを拒否すれば親は監獄⾏となり、⿊い⽯を選べばその⾦貸しと結婚しなければならないからだ。この物語は垂直的思考と水平的思考の違いをはっきり表している。
垂直的思考をする人は、娘がいずれにしても石を選ばなければならいということにこだわっている。これに対して、水平的思考をする人は、さいふの中に残る小石そのものに目をつける。垂直的思考をする人が、事態を冷静に⾒わたし、綿密に検討し、論理的に考えをすすめるのに対して、⽔平的思考の⼈は、事態を別の角度から、まったく違ったものの⾒⽅を求めるものである。
この娘は、さいふの中に手を入れて、小石を一つ取り出す。そして⼩⽯が⿊か⽩かを確かめずに⼿から滑り落し、庭の⼩道の⼩⽯の中に落としてしまう。そして、「私って不調法ね、でも⼤丈夫。さいふの中に残っている⼩⽯を⾒れば、いま落した⼩⽯の⾊がわかりますものね」といった。
もちろん、さいふの中に残っている⽯は⿊だから、娘が最初に取り出した⽯は⽩ということになる。⾦貸しもあえて自分がやった“誤魔化し”を認めるわけにはいかないだろう。このようにして娘は、水平的思考をすることによって絶体絶命のピンチから脱出して、きわめて有利な⽴場に⽴つことができた。
※参考⽂献︓『⽔平思考の世界』(エドワード・デボノ著/講談社/昭和 44 年刊)