【Story研修・特別版】
「ビジネスマナー研修」の話題から(2015年3月8日投稿)
往来しぐさ また会いたい人になるための「江戸しぐさ」(3)
火事と喧嘩は江戸の華と言われますが、幕末から明治初頭に日本を訪れた外国人の日記や文献から窺い知るところでは、江戸は大変治安のよい町だったようです。今回紹介する「七三歩き」「片目出し」「韋駄天しぐさ」などは江戸人のモラルの高さを示し、それらが町の平安を保つ上で大きな役割を果たしていたのではないでしょうか。
道路を歩いていて人とすれ違うとき、お互いに右肩を後ろに引いて、対面する形ですれ違うことを「肩ひき」と言います。「傘かしげ」とは、雨の日や雪の日に互いの体を濡らさないように、さした傘を外側に傾けてすれちがうことです。どちらも、譲り合いと思いやりの心が基本になっている代表的な江戸しぐさです。
江戸人たちは、道路の幅七分目は公道、三分目は自分が歩く道と考えていました。飛脚とか戸板で運ばれる急病人など、急ぎの用事のある人の邪魔をしないように気を配っていたのです。現代の道路は危険がいっぱいです。自転車と歩行者の事故が目立っています。七三歩きの心を忘れないようにしたいものです。
屋外から道路へ出るときの用心のしぐさです。いきなり飛び出して、人様や大八車などとぶつからないようにと、まず半分だけ顔を突き出し、次に、右左と様子をうかがい、通りがかりの人がいたら「通りゃんせ」と通してから歩き出しました。車が多い現代こそ、もっと見直されていいしぐさではないでしょうか。
江戸の町では、猛スピードで走ることは禁じられていました。人にぶつかったりすると事故になるからです。転ばぬ先の杖と言ったらいいでしょうか。用心のしぐさのひとつです。ちなみに韋駄天とは非常に足の速い神様のことで、韋駄天走りの語源でしたね。仏舎利を奪って逃げた⿁を追い掛け取り返したとう伝説もありました。
後ろから来る人を気にせず、道路で数人が横になって道をふさいで歩くことを言います。友だち同士で楽しい話に熱中しているのはともかく、後ろの人に気がつかないのは野暮です。こんな歩き方をしていると、江戸時代ならば「背中にも目をつけろ!」と叱られたといいます。
※参考文献:『入門 江戸しぐさ』(越川禮子著/教育評論社)