【Story研修・特別版】
「ビジネスマナー研修」の話題から(2015年3月5日投稿)
お付き合いしぐさ また会いたい人になるための「江戸しぐさ」(2)
参考文献『入門 江戸しぐさ』の著者・越川禮子氏の師匠だった故・芝三光氏は“マナー”と“癖”の違いを、「マナーというのは知っているのにやらないときがあるけれど、癖はやらずにいられないこと、人が見ていようがいまいがそうしてしまうこと」と、語られたそうです。癖は、紳士淑女にとって曲者(クセモノ)なのですね。
人にはじめて会うとき、ありのままの自分を見てもらうように心がけることをいいます。交渉ごとはなにごともはじめが肝心です。ボタンのかけ違いが後々大きな失敗につながります。自分の実力が正確に伝わるように背伸びしない控えめな態度が好感をもたれます。
相手のいうことに耳を傾けようとせず自分の言いたいことをしゃべりまくるだけの人をムクドリといい、江戸人たちは、こんな人がいると雰囲気がとげとげしくなると嫌いました。一方、クラゲしぐさとは、ワット押し寄せてきて、海の水が引くようにすっといなくなってしまう人のことを言います。いずれの人も信用されませんでした。
江戸時代は、ことさらな「禁煙」という言葉は見当たりませんでした。相手が吸わなかったら吸わず、灰皿のない場所は禁煙場所との共通の認識がありました。ですから、食べ物屋などでタバコを吸っていると、「根付け(煙草入れを持ち歩くときの留め具)をいただいてよろしいでしょうか」と店の人が言いに来たそうです。
江戸人たちはバナナが好きでした。皮をむき包丁で切ったものを皿に並べ、箸でつまんで食べました。実をかじるのはサルやねずみのすることで人のすることではないと考えていたからです。しかし、水害や火災のときは、そうした丸かじりをする食べ方も、この際だからと許されたそうです。
落花生のことをあとひき豆といいます。おいしいのでもう一度食べたいという意味ですね。つまり、「あとひきしぐさ」とは、もう一度会ってみたいという気持ちを起こさせるしぐさのことです。分かれて数歩行ってから振り返る心残りのしぐさもイキなものです。これも「あとひきしぐさ」のひとつです。
※参考文献:『入門 江戸しぐさ』(越川禮子著/教育評論社)