【Story研修・特別版】
「ビジネスマナー研修」の話題から(2015 年 3 月15日投稿)
“江戸しぐさ”女性編 また会いたい人になるための「江戸しぐさ」(5)
封建社会だった江戸時代は、女性には厳しい時代だったと思われがちですが、意外とそうでもなかったのではと、思われる記述が参考文献のあちこちに出てきます。このシリーズの最終回は、女性に関する「しきたり」だけを集めてみました。一断面かもしれませんが、女性への思い遣りに満ちた社会であったことが窺われます。
寄り合いなどでは、男性は早く来ても、上がり框(かまち)から一尺(約 30 センチ)ほど離れたところに履物を脱いで座敷に上がったそうです。後から来た女性の裾が乱れないようにとの気遣いからでした。江戸の町では、「女は人のはじまりのこと」と言われ、女性は今のわたしたちが想像する以上に大切にされていたようです。
江戸時代の美女の条件は、もって生まれた容姿プラス自分の努力で身につけた「おくゆかしい雰囲気」でした。たとえ美人だからといって、しゃしゃり出ず、目立つことは避け、自然に振る舞うことが求められました。そして、ちょっと一歩引いて、相手を尊重するしぐさが、ますますその女性を魅力的に見せることになったのです。
駅のホームで小間物屋を広げている若い女性を目にすることがよくあります。小間物屋を広げるとは食べたものを吐くという意味です。また、電車の中で、眉毛を描いたりまつ毛をカールさせたりなど、人目を気にせずお化粧するのも、さしずめ「じだらくしぐさ」と言えるのではないでしょうか。
人の前を横切ることです。急いでいるとき、つい、人の前を横切ってしまうことがあります。急いでいても、さっと左右を見渡して、目の前の人が通り過ぎてからすっと通過すれば、迷惑をかけることはありません。ちなみに、江戸時代、大名行列の前を横切っていいのは、唯一、出産に駆けつけるお産婆さんだけだったそうです。
お互いに気持ち良く暮らすための心構えを形にしたものだそうです。江戸人はこの心構えをマナーでなくセンスとして身につけました。“江戸しぐさ”の基本は、自立した人々が対等に誇りを持って生きていくということでした。江戸の共生は互角に向き合える、言い合える、付き合えるということだったようですね。
※参考文献:『入門 江戸しぐさ』(越川禮子著/教育評論社)